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帰国して それなりに必死に生きております。


by bakiwan

trip、それは本当に不本意だ。

 もうじいちゃんがそんなに長くない、と母から電話がきたのが1月の末ごろ。
 今まで入退院を繰り返し、ホスピスに移ったことも知っていたので本来なら衝撃が小さくて済むはずだったのだろうが、いつでも見通しの甘い私は今度もどこか大げさに騒いでいてくれている事を期待していた。たぶん信じたくなかったんだろうと思う。
 私はじいちゃん子だ。
 小さい頃からじいちゃんは私を恐ろしくかわいがってくれ、何があっても俺はお前の味方だ、何かあったらすぐに電話してこい、一言「助けて」と言えばどこでもすぐに行くから、とじいちゃんはずっと私に言っていた。
 やばい、もういい加減現実に慣れたと思っていたのに、まだ涙が出てきて止まらない。今更泣いたってじいちゃんにはもう会えないのに。

 とてつもなく嫌な予感がしてあわてて飛行機のチケットをとり、「チケット取れたよ」と電話したときに、それを告げる前に「昨晩亡くなった」と聞かされた。私はなんてバカなんだろう。あんなに私の事を心配してくれた人に、最期顔を見せてやることも出来なかった。
 去年6月に帰ったとき、まだつかまり立ちをしていたぽんきちを見て「お前の小さい頃そっくりだ」と何度も何度も言っていたじいちゃんは、なんだか奇妙に白いちっちゃい箱の中に入ってしまっていた。
 母や祖母に「Ninaにだけは言うな」と私を気遣ってくれていたじいちゃんは、きっと私の顔を見たかったろうと思う。
 私はそんなこと想像したこともないからよくわからないけど、死に瀕して人間っていうのはそんなにも人を思えるものなのだろうか。小さいぽんきちを連れて、ダンナを放って長旅なんてしちゃいけないっていうのは、私にとってはそんなにたいした事ではなかったのに。

 逢いたかったなあ。すごく逢いたかったなあ。あんな心配そうな顔で私を見る写真なんかで逢っても嬉しくないよじいちゃん。何種類もお線香あげたけど、本当は一緒に酒飲みたかったなあ。本当はもっとぽんきち抱かせてあげたかったなあ。
 もうたくさん歩くよ、ちょっと喋るよ、意味不明だけどずうっと喋ってるよ、ばあちゃんにだるまさんとにらめっこ教わって出来るようになったんだよ。友達だって出来たよ。ちゃんとお辞儀できるよ。長旅のおかげであまえんぼさんになっちゃったけど、それこそ私にそっくりなんでしょ?だって何度も言ってたじゃんか、あまっこあまっこで困るって。何でもう一回困ってくれなかったんだよ、ばあちゃん一人で困ってたんだ。どうするんだよばあちゃん一人になっちゃったじゃないか。

 もうなんかぐじゃぐじゃになってきたから書くのやめる。いつまでもあまっこでいちゃだめだから。
 飛行機の中でぽんきちは、あっちこっちからお菓子貰って楽しそうでした。
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by bakiwan | 2006-02-21 21:48